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「じゃあその五十三分をどうするの」
「したいことをすればいいのさ. . . 」
( ぼくなら ) ちいさな王子は思った。( 五十三分あれば、水飲み場の方へゆっくり歩いていくのに. . . )
24
砂漠で飛行機が故障してから八日目だった。たくわえていた水の最後の一滴を飲みながら、ぼくはその商人の話を聞いていた。
「ああ!」 ぼくはちいさな王子に言った。「とてもすてきだね、きみの思い出は。でもぼくの飛行機はまだ修理ができてないし、飲み水は全然ないんだ。だからぼくも同じように、水飲み場の方へゆっくり歩いていけたら、うれしいんだけどなあ!」
「ぼくの友だちのキツネはね. . .」 かれはぼくに言った。
「あのね、ぼうや、もうキツネどころじゃないんだよ!」
「どうして?」
「どうしてって、のどが渇いてもうすぐ死ぬんだから. . . 」
かれはぼくの理屈を理解しないで、ぼくに答えた。
「友だちをもったことはいいことなんだ、たとえもうすぐ死ぬにしても。ぼくはといえば、キツネと友だちになって、ほんとによかった. . . 」
( かれは危険がわからないんだ ) ぼくは思った。( かれ
は決して飢えたり、のどが渇いたりしない。かれにはすこしの日の光があれば充分なんだ. . . )
2016-10-01 19:46