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 「酒を飲むのが恥ずかしいんだ!」 酒飲みは話しおえて、沈黙のなかに完全に引きこもった。
 ちいさな王子はとまどいながら立ち去った。
 ( 大人って確かに、とってもとっても変だ ) かれは旅を続けながら思った。


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 四番目の星はビジネスマンの星だった。その男はとても忙しくて、ちいさな王子がやってきても顔をあげさえしなかった。
 「こんにちは」 王子は言った。「タバコの火が消えてますよ」
 「三たす二は五。五たす七は十二。十二たす三は十五。こんにちは。十五たす七は二十二。二十二たす六は二十八。タバコに火をつけなおす時間がない。二十六たす五は三十一。ふう! 五億百六十二万二千七百三十一になった」
 「五億ってなにが?」
 「えっ? まだそこにいたの? 五億百万. . . わからん. . . 仕事がたくさんあるんだ! おれはちゃんとやる男だ。無駄話なんかしない! 二たす五は七. . . 」
 「五億ってなにが?」 ちいさな王子はくり返した。一度した質問は決してあきらめなかった。
 ビジネスマンは顔をあげた。

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