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 それからかれはキツネの方に戻った。
 「さよなら」 かれは言った。
 「さよなら」 キツネは言った。「ぼくの秘密だよ。とても簡単さ。心で見ないとよく見えない。大切なものは、目に見えないんだ」
 「大切なものは、目に見えない」 覚えておくために、ちいさな王子はくり返した。
 「きみのバラに失った時間こそが、きみのバラをそれほど大事なものにしたんだ」
 「ぼくのバラに失った時間こそが. . . 」 覚えておくために、ちいさな王子は言った。
 「人間たちはこの真理を忘れてしまっている」 キツネは言った。「だがきみはそれを忘れてはだめだ。きみがなつかせたものに対して、きみは永久に責任をもつことになる。きみのバラに、きみは責任がある. . . 」
 「ぼくのバラに、ぼくは責任がある. . . 」 覚えておくために、ちいさな王子はくり返した。


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 「こんにちは」 ちいさな王子は言った。
 「こんにちは」 転(てん)轍手(てつしゅ)は言った。
 「ここでなにをしてるの?」 ちいさな王子は言った。
 「旅行者たちを千人ずつまとめて入れかえてるんだ」

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