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 「陛下. . . おたずねしたいことがありますが. . . 」
 「たずねることを命じる」 王さまは急いで言った。
 「陛下. . . なにを統治していらっしゃるんですか?」
 「すべてじゃ」 きわめて簡単に王さまは答えた。
 「すべて?」
 王さまはさりげなく自分の星とほかの星たちを指さした。
 「あれらすべてですか?」 ちいさな王子は言った。
 「あれらすべてじゃ. . . 」 王さまは答えた。
 なぜなら王さまは絶対君主であっただけでなく、宇宙の君主でもあったのだから。
 「じゃあ、星たちは陛下に従うんですか?」
 「もちろんじゃ」 王さまは言った。「みんなすぐに従うぞ。わしは不服従を許さん」
 そのような権力にちいさな王子は驚いた。もし王子自身がそのような権力をもっていたなら、同じ日に自分のいすを決して引かずに夕日を四十四回どころか、七十二回でも、百回や二百回でさえ見ることがでただろうに! そしてかれが見捨てた小さな星を思い出して、少し悲しくなったので、思いきって王さまにお願いしてみた。
 「ぼくは夕日が見たいんです. . . ぼくを喜ばせてください. . . お日さまに沈むように命じてください. . . 」
 「わしがもし将軍に蝶のように花から花へと飛ぶようにとか、悲劇を書けとか、海鳥になれとか命じて、その将軍が命令を実行しないのならば、かれとわしのどちらが間違っているのじゃ?」

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