106
「ああ! きたんだ. . . 」
かれはぼくの手をにぎった。しかしかれはまた苦しんだ。
「きみはまちがえたよ。つらくなるよ。ぼくは死んだようになる。でもそれはほんとじゃないんだ. . . 」
ぼくは、黙っていた。
「わかるよね。遠すぎるんだ。ぼくは、この体をもっていけない。重すぎるんだ」
ぼくは、黙っていた。
「でもこれは、はがれた一枚の古い木の皮のようになるんだ。古い木の皮たち、というものは悲しくないよ. . . 」
ぼくは、黙っていた。
かれはちょっと気落ちした。けれどまた気をとりなおした。
「すてきだろうね。ぼくも、星たちをながめるよ。すべての星たちが、さびたプーリーのついた井戸になるんだ。すべての星たちが、ぼくに水をついでくれるんだ. . . 」
ぼくは、黙っていた。
「それはとっても楽しいよ! きみは五億の鈴をもつ。ぼくは五億の泉をもつんだ. . . 」
そしてかれも口をとざした。泣いていたから. . .
「ここだよ。ぼくひとりで、一歩ふみださせて」
それなのにかれはすわりこんだ。こわかったのだ。かれはまた言った。
かれはぼくの手をにぎった。しかしかれはまた苦しんだ。
「きみはまちがえたよ。つらくなるよ。ぼくは死んだようになる。でもそれはほんとじゃないんだ. . . 」
ぼくは、黙っていた。
「わかるよね。遠すぎるんだ。ぼくは、この体をもっていけない。重すぎるんだ」
ぼくは、黙っていた。
「でもこれは、はがれた一枚の古い木の皮のようになるんだ。古い木の皮たち、というものは悲しくないよ. . . 」
ぼくは、黙っていた。
かれはちょっと気落ちした。けれどまた気をとりなおした。
「すてきだろうね。ぼくも、星たちをながめるよ。すべての星たちが、さびたプーリーのついた井戸になるんだ。すべての星たちが、ぼくに水をついでくれるんだ. . . 」
ぼくは、黙っていた。
「それはとっても楽しいよ! きみは五億の鈴をもつ。ぼくは五億の泉をもつんだ. . . 」
そしてかれも口をとざした。泣いていたから. . .
「ここだよ。ぼくひとりで、一歩ふみださせて」
それなのにかれはすわりこんだ。こわかったのだ。かれはまた言った。
2016-10-01 19:33