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 「今夜、ぼく、もっとこわいだろう. . . 」
 取りかえしがつかない気持ちから、ぼくはまた全身が凍るのを感じた。そしてこの笑い声がもう決して聞けなくなると思うだけで、ぼくはとても耐えられないことがわかった。 その笑い声はぼくにとって砂漠のなかの泉のようだった。
 「ぼうや、きみの笑い声がまた聞きたいんだ. . . 」
 でもかれはぼくに言った。
 「今夜で、一年になる。ぼくの星は去年ぼくが落ちてきた場所の、ちょうど真上にあるんだ. . . 」
 「ぼうや、ヘビのことも、会う約束も、星のことも、それらの話は悪い夢だよね. . . 」
 でもかれはぼくの質問に答えないで、ぼくに言った。
 「大切なもの、それは目に見えないんだ. . . 」
 「そうだね. . . 」
 「それはあの花と同じようだね。ある星に咲く一輪の花をきみが好きになると、夜、空をながめるのが心地よくなる。すべての星たちに花が咲くんだ」
 「そうだね. . . 」
 「それはあの水と同じようだね。きみがぼくに飲ませてくれた水は、滑車や綱のおかげで音楽のようだった. . . 覚えているよね. . . あれはいい水だったよ」
 「そうだね. . . 」
 「きみは、夜、星たちを、ながめるだろう。ぼくの星はちいさすぎて、どこにあるのかきみに教えられない。でもそのほうがいいんだ。ぼくの星はきみにとって、星たちのなかのひとつになるんだ。そのとき星たち全部をながめるのが好きになるさ. . . 星たちがみんなきみの友だちになるよ。それからきみに贈り物をあげる. . . 」

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