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 「ああ! なんとかなるよ」 かれは言った。「子どもたちはわかるさ」
 そこでぼくは口輪をえんぴつで描いた。そしてそれをかれにあげるとき、ぼくは胸がしめつけられた。
 「きみにはぼくの知らない計画があるんだね. . . 」
 しかしかれはぼくに答えないで、こう言った。
 「ねえ、ぼくが地球に落ちてきて. . . あしたがその記念日なんだ. . . 」
 それから黙ったあとに、かれはまた言った。
 「ぼくはこのすぐ近くに落ちたんだ. . . 」
 そしてかれは顔を赤らめた。
 また、なぜかわからないまま、ぼくは奇妙な悲しみを感じた。けれどもある質問が頭に浮かんだ。
 「じゃあ偶然じゃなかったんだ。一週間前、ぼくがきみと知りあった朝、人の住んでいるすべての地域から、はるかに離れた所に、たったひとりで、あのように歩いていたのは! きみは落ちた地点に戻るところだったんだね?」
 ちいさな王子はまた顔を赤らめた。
 ぼくはためらいながら、つけ加えた。
 「たぶん、記念日が近かったからだね?. . . 」
 ちいさな王子はまたもや顔を赤らめた。かれは質問には決して答えなかったけれど、顔を赤らめたときは「そうだよ」を意味してるんだよね?
 「ああ!」ぼくはかれに言った。「ぼくは心配なんだ. . . 」
 しかしかれはぼくに答えた。

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