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 「見つからないんだよ. . . 」 ぼくは答えた。
 「でもね、自分たちが探しているものは、たった一輪のバラや、ほんの少しの水のなかに見つけれるのに. . .」   
 「そうだね」 ぼくは答えた。
 そしてちいさな王子はつけ加えた。
 「でも目では見えないんだ。心で探さなくちゃいけない」

 ぼくは水を飲んで、とてもほっとしていた。夜明けの砂は蜜の色だ。ぼくはその蜜の色もまたうれしかった。なぜぼくは悲しく感じなければならなかったのか. . .
 「約束は守らなければね」 ちいさな王子はぼくに静かに言った。かれはまた、ぼくのそばにすわっていた。
 「なんの約束?」
 「ほら. . . ぼくの羊の口輪だよ. . . ぼくはあの花に責任があるんだ!」
 ぼくはポケットから絵の下書きを何枚か取り出した。ちいさな王子はそれらを見て、笑いながら言った。
 「きみのバオバブは、ちょっとキャベツみたいだ. . . 」
 「あー!」
 このぼくはバオバブの絵に、とても自信があったのに!
 「きみのキツネは. . . 耳が. . . ちょっと角みたいだ. . .長すぎるよ!」
 そしてかれはまた笑った。
 「きみは不公平だよ、ぼうや。ぼくはボアの内側と外側しか描けなかったんだよ」

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