SSブログ

60

 「それっておかしいよ! この星は一日が一分なんだ!」
 「ぜんぜんおかしくないよ」 点灯人は言った。「いっしょに話してから、もう一ヶ月たってるよ」
 「一ヶ月?」
 「そう。三十分。三十日! こんばんは」
 そしてかれは街灯をともした。
 ちいさな王子はかれを見て、指示にそれほど忠実な点灯人が好きになった。かれは以前、いすを引っぱって夕日を追いもとめていたことを思い出した。かれの友だちを助けたいと思った。
 「ねえ. . . ぼく、休みたいとき休む方法を知ってるんだ. . . 」
 「いつでも休みたいよ」 点灯人は言った。
 人は忠実であると同時に怠け者でもありえるんだからね。ちいさな王子は続けて言った。
 「きみの星はとてもちいさいから、三歩大股で歩けば一周できる。かなりゆっくり歩くだけで、いつも日のあたるところにいられる。休みたいときは、歩けばいい. . . そうしたら、すきなだけ昼間が続くよ」
 「それは大して役にたたない」 点灯人は言った。「わたしの人生で好きなこと、それは眠ることなんだ」
 「しかたがないね」 ちいさな王子は言った。
 「しかたがないよ」 点灯人は言った。「おはよう」
 そしてかれは街灯を消した。

6159 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。